私は海外文学を避けてきた。というのも、海外文学を読んでいると「それ読みやすいし原文で読んだら? はいこれ」と言ってくる人が父親だったからだ。「お前くらいの時に初めて原文で読んだのがこれだったんだ」としみじみしていたから、心からの善意だったと思う。ただ、子供に自分と同程度の能力があるという勘違いをしていた。かくして手渡された The Catcher in the Rye を私は15年ほど借りパクしている。だって返す時に感想聞かれるじゃないですか、読めませんでしたって言えますか? 私は言えませんでした。ところで皆さん、これどうしたらいいと思いますか? 返すとき今さらなんと言えばいいのでしょう?
実家はど田舎なので、本屋さんが勝手に蔵に”良い本”1を置いていき、勝手に祖父の口座から引き落とすというシステムで本が増えた。解約の仕方がわからないところがサブスクに似ている。祖父が亡くなるまでこのシステムは続いた。
父の本の一部はガラス戸のついた本棚に入っていた。 The Catcher in the Rye はその中の一冊だったと思う。マグネット式で、開ける時に少し力が必要だった。ほとんどの本にカバーがかかっていて、私には開くまでどんな本かわからなかった。こっそり物色したところ、開いてみた本が全てシェイクスピアで、何も読まずに扉を閉めた。
サンタクロースからのプレゼントもいつも本だった。
そんな環境だったので、海外文学はちょっと肌に合わないんだよねという態度をとっていた。さもなくば読めも返せもしない本で自室が埋まっていただろう。兄は兄で日本の純文学しか読まないという偏った読書をするようになってしまったことからも、環境が悪かったのは明白で、私は何も悪くないです。
そんな私ですが、今は海外文学を読んでいます。きっかけは谷崎由依という作家・翻訳家でした。日本語が綺麗で、とくに『遠の眠りの』2という作品がすごく好きで、作家として書いた本は全部読んじゃって、でももっとこの人の美しい文章が読みたくて、忌避していた翻訳された本にも意を決して手を出したら、これがめちゃくちゃ面白かった! 海外文学って面白いのかも?ってなって、ハヤカワepi文庫の他の本も読んでみると、知らない価値観、知らない文化! なんでもっと早く海外文学は面白いって教えてくれなかったんですか?
いや、そういえばずっと昔に海外文学を貸してくれた人がいたような気がする……
なんて言って返したらいいかはわかりませんが、頑張って The Catcher in the Rye を返そうと思います。気の利いた一言を募集中です。オススメの海外文学も募集中です。翻訳が出てるやつでお願いします。15年後に読みます。3
Footnotes
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「〇〇全集」みたいな単価の高い本のこと ↩
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この本の感想を書こうとしたのですが、うまく書けませんでした。この本のどこが好きかを説明するためには、自分のコンプレックスに触れる必要があるように感じています。また、扱っているテーマが重く、私には覚悟と技術が足りていないように思われます。もっと文章を書く練習をしておくべきでした(このブログはその反省も込めて書いています)。自分の価値観や行動を変えてもらう体験は人生の大きな喜びの一つで、感謝を伝えたく、ファンレターを書こうかとも思ったのですが、伝えるためには自分のことを書く必要があり、いきなり自分のことを語る人になってしまいます。そんな訳で個人ブログに書いています。 ↩
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今回注釈をつけてみました。理由はなんかかっこいいからです。イエーイ! 見てるー? ↩